失敗をゆるさない日本社会と「カルチャーとしての漢方薬」

中国や台湾、香港などに行くと、苦い薬であるはずの漢方薬が日常生活に浸透しているのを感じたことはありませんか?

香港旅行記でもご紹介した、お肌にいいとされる亀ゼリーや夏バテに効くとされる五花茶などもその1つです。香港人の友人宅では、友人のお母さんが「体の熱を逃がす漢方茶」を自宅で手作りして大量にストックしています。これがまた美味しい。

日本では寒い冬に飲むイメージのある「甘酒」が俳句界では夏の季語なのも、昔の日本人が漢方学に基づいて「甘酒」を夏バテ防止として夏に飲んでいたからなのだそう。夏バテ防止の栄養ドリンク、今で言ったら「ポカリスエット」のようなものですかね。

「苦い薬」「堅苦しい学問」というイメージだった漢方学が、一気に身近に生活の知恵として、または「カルチャー」として身近なものに感じませんか?
spice何千年という歴史を経て、トライ&エラーを繰り返し、時には人を殺し、時には「一体何のために」というような材料から作られて来た漢方薬の歴史を、漢方医でありCakesの「申し訳ないほどおもしろいサブカル漢方大全」で連載もされている村上史崇先生は「ストレスに負けない生き方そのもの」だと言っています。

すべては時代と共に変わっていくものですから、今の常識だけが正解ではないのです。そうした「正解のなさ」を受け入れられるようになったことこそ、漢方の歴史から学んだ最大の収穫だったように思います。
− 村上 史崇 著 「読む漢方薬」双葉社 p. 295より

今日は、「髪まで生える漢方版イボコロリ」や「返って動揺しそうな精神安定剤」などのオモシロイ例を使いながら漢方の歴史と現代社会での健康なあり方をおもしろおかしく解説してくれる「ストレスに負けない心になる『人生の処方箋』」としての漢方薬の魅力を、村上史崇先生著「読む漢方薬」のレビューと共にお届けします。

1.「失敗を許さない日本社会」と回り道だらけの漢方の歴史

旅先でガイドブックをみて最短距離で一直線に訪ねる観光名所もたのしいですが、ぶらぶらしているうちに訳の分からない路地裏に迷い込んで、でも素敵なカフェや雑貨屋さんを見つけた時って最短距離で目的地に着いたときよりもワクワクしませんか?

一方で、過酷な受験戦争、就職活動、度を超した芸能人叩きなどをみていると、日本の社会は失敗や回り道を許さない構造であるなと思います。もちろん、若い世代でそういう構造を壊そうという風潮はありますが、その構造の中の権力者はまだ若い世代ではありません。この失敗を許さない社会構造は、それを壊そうとする世代を、壊す前に疲れ果てさせてしまわないかと心配になることもあります。

「長生きしたい」「病気の苦しみから開放されたい」という人々のニーズに寄り添おうとしてきた漢方の歴史は、それと同時にとんでもない毒薬を生んだり奇妙な習慣になったりしながらも、それぞれの時代に合わせて良い面と悪い面が組み合わさりながら人々を助けてきました。

ヨーロッパでは麻酔がない時代に漢方薬のみで麻酔を完成させ手術をできていたのも、想像を絶するような長い歴史の中でトライ&エラーを繰り返した結果だと考えると、漢方の歴史そのものが、失敗や意味がないと思ったことも、後から考えると意味があったり、思わぬ副産物があったりする「失敗の醍醐味」そのものを示してくれているような気がします。

この本全体を通して、最短で正解にたどり着く事だけが人生ではないし、むしろ回り道をした時のほうが「オモシロイ」というメッセージが、沢山の漢方の知識とともに伝わってきます。

2.普段の食事だって漢方の一部

小さい頃からアトピー性皮膚炎を持っている私は、小麦粉が入ったものと砂糖がはいったものを食べ過ぎるとアトピーが悪化します。なんでだろうな、と思っていたけれども、漢方学がそもそも普段の食事にも当てはめて考える事ができると考えると納得します。

西洋医学が今体に出ている症状を直すものだとすると、漢方学を始めとする東洋医学は病気の原因を直す、または病気にならない体を作ることを目的としているそうですが、江戸時代の甘酒もそのひとつの例。断食をして体をデトッックスしたり、粗食で健康を保ったりする健康法も流行っていますが、食事を「カルチャーとしての漢方薬」と捉えると、納得できます。

漢方はそれぞれのカラダとココロの両方のバランス、すなわち「インナーバランス」を整えて、その人のポテンシャルを最大限に引き出してくれる状態を目指しているのです。

3.さいごに

健康に生きることは、これすなわち「楽しく生きること」。

漢方の歴史とそれに関わった人の努力・失敗・成功の話を学ぶ事で、漢方学が目指す「健康である状態」になれる、なんとも気の利いた本だなぁ。

堅苦しい、といった漢方のイメージを払拭し「オモシロイ!」とうなってしまうこの本を読む事で、クスッと笑えて少し健康に近づけるかもしれません。

最近なんだかココロのバランスがなぁ、頑張りすぎて疲れちゃったなぁ、なんていう人がいたらオススメしたい本です。

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